「木を見て森を見ず」という言葉があります。意味は「物事の一部分に気を取られて全体を見失うこと」です。体温管理にも同じことが言えます。
冷え性や低体温などで不調をきたしている人や、そういった人達の役に立ちたいと思い体温管理指導士を目指している人は多くいます。
そのために「冷えているカラダの一部分」だけの知識ではなく「ヒトのカラダ全体」について知りましょう。
体温管理は、木だけではなく森を見ることにつながります。
体温管理の基本<血液について>
ヒトのカラダはとても複雑かつ繊細にできています。
不調の原因も様々で、どうしてこんなに不調が続くのだろう?
と悩んだこともあるでしょう。
ですが、不調を感じる人に共通することがあります。それは、血行不良の状態になっているということです。
人体は血液を循環させることで、必要なところに「栄養、熱、酸素、ホルモンなど」の大切な成分を運んでいます。
さらに、老廃物や余分な水分などを、対外へ排出するための運搬もしています。
つまり血行促進こそ、健康生活の第一歩です。血液は熱も運ぶため、血液を知ることが体温管理の基本となります。
血液の成分は血漿が55%、血球(赤血球・白血球・血小板)が45%
- 血漿は、91%が水分で栄養分を体内の各組織へ運び、そこで生じた老廃物を腎臓から排出したり、血圧の保持に役立っています。
- 赤血球は、酸素を運ぶ役割があります。酸素が少ないと貧血になりますが、男性より女性の方が赤血球数が少ないために貧血になりやすいです。
- 白血球は、ばい菌や異物を退治する役割があります。多い方が良いと思うかも知れませんが、多い方がばい菌が多いということになります。
- 血小板は、血液を固め止血する役割があります。血が固まりすぎると血管がつまり血栓になり、固まらないと血友病という病気になります。
体温管理には、しっかりと水分補給を
血液には多くの水分が含まれていますので、血行促進には水分の補充が欠かせません。
体温調節には水がもっとも良いのです。
水は比熱(1g当たりの物質の温度を1℃上げるのに必要な熱量)が高い物質で、温まりにくく冷めにくいという性質があります。
水は温度変化が少ないため、体温を一定に保つことに役立っています。
また、厚い夏の日や運動のときに汗をかくのは体熱の放散によって体内温度の上昇を防ぐためです。
このように水分のバランスも体温管理に大きな役割を果たしています。
<豆知識>血液の道路、血管は渋滞が起きやすい!?
血液の量は体重の役7~8%もあり、常に全身を循環しています。
血管には、心臓から元気な血液を送り出す動脈や、血液を心臓に戻す静脈、血液を全身に送り込む毛細血管があります。
このカラダの隅々までつながる血管は全部でどのくらいの長さでしょうか?
答えは約10万キロ、地球2周半の長さです。
予測よりも長いと感じませんか?
さらに驚くのは、その99%が毛細血管だということです。
これだけの距離を網羅しているのですから、血液の循環ってすごいですよね。
添加物や塩分・糖質・脂質などの多い食事・運動不足・ストレスなどによって血液の循環を妨げることをしがちな現代人は、血行不良になってしまうのも当然です。
あなたの体内の道路も渋滞を起こして大切な運搬作業が滞っていませんか?
正しい食生活、十分な睡眠、ストレス軽減、カラダを冷やさないなど大切なライフラインをキレイにする生活習慣を身に付けましょう。
【心臓の役割】
生命活動の中心部の心臓は、全身の血管に血液を送るポンプの役割を果たしています。
全身を循環し、酸素の少なくなった血液が静脈から右心房に流入し右心室を通って肺に送り出され酸素を受け取り、左心房から左心室へ流入し動脈へ送り出され体中を循環します。
【Pick Up】血管&血流チェックの強い味方
血管&血流チェックの強い味方<オートフォーカスマイクロスコープVIEWTY
常に血流は動いているため、ピント調整が難しいのですが、オートフォーカスマイクロスコープVIEWTYは高速オートフォーカスで、誰でも瞬時にピント調整ができます。
また、毛細血管の中を流れる血液の様子、スピードの変化を鮮明に確認することができます。
もちろん、採血の必要はなく、簡単操作でパソコン・スマートフォン・タブレットなどにつなげば、リアルタイムに目で見ることが可能です。
画像のデータ保存もできるので、血流の変化を観察できます。
体温管理ために血管&血流チェックするためにおすすめの製品です。
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体温管理に欠かせないもの<筋肉の働き>
実は筋肉も体温管理に大きな役割を果たしています。
そもそも筋肉は、伸び縮みする動きや、収縮によって力を発揮させる代表的な運動器官です。
男性では体重の約40%、女性では約35%を占めるほどの巨大組織で、カラダを動かすためでなく熱も生み出しています。
熱生産量の約60%が筋肉、20%前後が肝臓や腎臓、残り20%が褐色脂肪細胞とされています。
筋肉の収縮運動が低下すると熱生産も低下し、カラダが冷えてしまいます。
また、筋肉の疲労やコリは毛細血管を圧迫し血行不良を招きますので、体温管理には筋肉のケアが欠かせません。
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筋肉にも種類があります!
筋肉にも種類があります。自分の意志で動かせる筋肉「随意筋」はカラダを動かすために使われ、筋膜で覆われています。
随意筋は約400種類あり、ヒトが一歩歩くにの約200種類の筋肉を使うといれています。
この随意筋が固くこわばらないように適度な運動やマッサージなどのボディケアをおこないましょう。
また、筋肉の柔軟性を保つためや、筋膜のよじれから解放するためのストレッチはとても有効です。
自分の意識とは関係なく動く筋肉「不随意筋」は内臓を動かすためにあり、自律神経の影響を強く受けます。
不随意筋の働きを良くするためには、質の良い睡眠やリラックスした時間を過ごすひとが必要です。
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【Pick Up】マッサージとストレッチの違い
マッサージとストレッチの違いって?
「疲れたなぁ」と感じた時、マッサージやストレッチなどでカラダをほぐしてもらうことはありませんか?
でも、この2つはカラダにどんな影響を与えて、何か違いがあるのか、あまりピンとこない人も多いかと思います。
「マッサージは筋肉を押して緩めること」で「ストレッチはカラダを気持ちよく伸ばすこと」です。
それでは、カラダにどんな変化が期待できるのでしょうか?
マッサージは静脈や毛細血管における血液の循環やリンパ循環の改善、促進効果で免疫力が高まるといわれています。
また、筋肉内の血液の循環が盛んになることから、疲労回復が早められ、皮膚温度も上昇します。
ストレッチは筋肉の柔軟性を高める、関節可動域を広げる、神経機能の向上、老廃物の代謝も期待できるようです。
そして、血行促進や筋肉を緩めるなどマッサージのような効果もあるようです。
どちらが優れているということではなく、カラダを癒すためには両方効果的ですが、マッサージは揉み返しなどのリスクもあるので、施術には専門家の知識とスキルが必要です。
ストレッチはここまで!と感じるちょっとその先まで伸ばすのが効果的です。セルフストレッチもいいですが、ペアストレッチもちらに効果的です。
そういえば、最近ストレッチ専門店なんかもありますね。体温管理にもストレッチのような、ほど良い運動はおすすめです。
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<豆知識>ダイエットのキーファクター、褐色脂肪細胞とは!?
脂肪には2つの機能があり「蓄える機能」と「燃やす機能」があります。蓄える機能は「白色脂肪細胞」と言い、一般的に「体脂肪」といわれるものです。
この白色脂肪細胞は蓄えることが仕事なので、自分で死亡を燃やすことはしません。接種しても使われなかったエネルギーはどんどん蓄えられていきます。
白色脂肪細胞は全身のあらゆる場所にありますが、特につきやすい部分は「下腹部、尻、太もも、上腕部」です。
それに対して、燃やす機能を「褐色脂肪細胞」と言います。褐色脂肪細胞は白色脂肪細胞を取込み、エネルギーを燃焼させて熱を作ります。余分な体脂肪を燃やして熱に変えてくれるヒーターのような役割の有難い褐色脂肪細胞ですが、体内の限られたところにしかありません。
それは「首周辺・肩甲骨周辺・わきの下・脊髄周辺」です。熱生産はもちろんですが、ダイエットを考えたた場合、この褐色脂肪細胞を増やせばよいと思いますよね?
ところが、褐色脂肪細胞は年齢とともに減少する一方で増えることはないのです。しかも、幼児期に比べて30代で50%、40代で30%程度まで減少してしまいます。
「昔はいくら食べても太らなかったのに40代前半くらいからお腹がでてきた」なんて方いませんか?
それは、褐色脂肪細胞の減少が原因なのです。それでは、あきらめるしかないのでしょうか?
いいえ違います。少なくなった褐色脂肪細胞を活性化させることで、今より痩せやすい体質に変えることができます。
褐色脂肪細胞は、ほとんど背面にあることからリンパドレナージュなどで全身のリンパを流すことが効果的でしょう。
セルフケアなら、褐色脂肪細胞は肩甲骨周辺にもっとも多くありますので、肩甲骨をしっかり動かす、肩甲骨周辺を重点的に温める等がおすすめです。
体温管理を司るもの<神経の不思議>
神経は人体の司令塔です。意識的に行うことも、無意識のうちに処理されていることも、すべては神経の情報伝達によるものです。もちろん、体温管理も行っています。
ここでは、カラダを動かすたの「体性神経」ではなく、無意識に働く不思議な神経「自立神経」について学んでいきます。
自立神経は、内臓や血管の活動・呼吸などをコントロールしています。さらに、自律神経は交感神経と副交感神経に分かれていて、この2つは正反対の役割をしています。
日中は交感神経が優位に、夜間は副交感神経が優位になりやすくなります。どちらが優れているというわけではなく、バランスが大切ですが、現代人は交感神経が優位になりやすいといわれています。
2つの自律神経の働き
- 交感神経 主に緊張状態やストレスを感じているときに働きます。仕事や勉強・スポーツなどをしているときです。
- 副交感神経 主にリラックスしているときに働きます。睡眠や食事・入浴などです。
自立神経を整える
自立神経を整えようといわれていますが、交感神経が優位になりがちな現代、リラックスタイムを心がけてパソコンやスマートフォン・ゲームなどで楽しんでいる人は多いのではないでしょうか。
しかし、自分ではリラックスタイムと感じていても、目を酷使することで緊張状態の交感神経優位になってしまいます。
交感神経優位が続くと毛細血管が収縮し血流が悪くなり、冷え性や低体温を招くこともあります。
また、体温を維持、調整するためには自立神経による臓器や器官の制御が必要です。自立神経が乱れ、体内の熱生産と放散の調整が乱れると低体温の危険があります。
このように、自立神経は体温管理と深く関係しています。
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【Pick Up】ブルーライトってなに?
よく聞く、ブルーライトってなに?
LED、パソコン、スマートフォンなどから発するブルーライト。目に悪いなどといわれていますが、そもそもブルーライトとは何なのか。
それは唯一目に見える光「可視光線」の一種で紫外線に近く、強いエネルギーを持つため角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで届くといわれている光です。
そのためピント調節機能を酷使され眼精疲労を及ぼしたり、涙を減らす(ドライアイ)などの悪影響があります。
目に悪いといわれていますが、実はカラダを目覚めさせるために朝、昼はブルーライトを浴びることは必要です。
ですが、夜にブルーライトを浴びると脳がまだ昼間だと勘違いしてしまい、睡眠を促すメラトニンという物質が分泌されなくなり、体内リズムが乱れてしまいます。
夜はスマートフォンはそこそこに、しっかりと目と脳を休ませてあげましょう。
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<豆知識>目を温めて自立神経を整える!
目の動きは、ほとんどが自律神経に支配されているので、目の周りには自律神経が集中しています。
しかも、眼球の動きに関わる神経をコントロールしたり、目のレンズ(水晶体)の厚みを調節してビントを合わせたり、瞳孔を収縮させて目に入る光の量を調節したりしています。
これだけ忙しく働いている目の周りの自律神経に日頃のケアが必要だと思いませんか?
目をリラックスさせるためには「温める」ことが良いのです。目を温めて、副交感神経を優位にするとカラダがリラックスし、血行がよくなり、対応の上昇につながります。
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【Point】神経の仕組み
現代では、交感神経優位が悪者のように扱われてしまうこともありますが、そんなことはありません。
例えば、強盗やクマなどの恐ろしいものに出くわしたとします。逃げないと死んでしまいますよね。
すると、カラダは交感神経優位になり、精一杯早く走るために血液のポンプである心臓を早く動かします。これが動悸です。
それにより走るのに必要な太い筋肉に優先的に血液を届けます。このように交感神経も大切な役割を担っています。
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体温管理のメカニズム<免疫力の大切さ>
免疫とは、外部から侵入してきたウィルスや細菌、体内で発生したガン細胞などから身を護るための自己防衛システムです。
免疫の仕組みは複雑で、いくつもの免疫細胞が協調しあって働いています。
実は、ヒトのカラダの中では毎日ガン細胞などの異物ができています。それでも元気に過ごせているのは様々な免疫細胞が連動して、ガン細胞などの異物をやっつけているからです。
もし免疫システムがなくなってしまったとしたら、すぐに病気にかかってしまいます。
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体温を上げると免疫力はアップする!
それでは、この大切な免疫力を上げるにはどうしたらよいのでしょうか?
それは、体温を上げることです。
ではなぜ体温を上げると免疫力はアップするのか?
その答えは、免疫細胞は血液の中にいるからです。
カラダの中は熱が高いところで温められた血液が低いところに運ばれて温められることで体温調節ができます。この血行が滞り体温が下がると、体内の異物が発見されても素早く攻撃ができなくなります。
免疫力が正常に保たれている体温は36.5℃程度といわれています。免疫力は体温が1℃下がると30%低下し、逆に1℃上がると5倍以上の力を発揮するといわれています。
そのことからも体温管理の重要性が良く解ると思います。低体温は免疫力を低下させ、風邪に代表される感染症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状、肌荒れなどの不調にとどまらず、ガンになるリスクも高まってしまいます。
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自然免疫と獲得免疫
免疫には大きく分けて自然免疫と獲得免疫があります。
自然免疫とは、生まれつき備わっている免疫のことで異物や病原体が体内に侵入するとすぐに働き病原体を攻撃します。(マクロファージ、好中球、樹状細胞、NK細胞、マスト細胞など)
獲得免疫とは、体内に入ってきた病原体の情報を覚え、準備をしてから働く免疫のことです。つまり、初めて侵入してきた病原体に対してはその情報を持っていないので働くことができません。
自然免疫が病原体と戦っている間に情報を収集し準備ができたら自然免疫と一緒に戦います。また、過去に出会った病原体に対してはすぐに働くことができます。(ヘルパーT細胞、キラーT細胞、B細胞など)
このように免疫は自然免疫と獲得免疫の2段階で働きます。
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NK細胞とは?
NK細胞は末梢血管の中に存在し、常に体内をパトロールしています。単独で行動し、自らの判断でガン細胞やウイルスなどをどんどん食べて死滅させます。
「NK」はネチュラルキラーの略で、「生まれながらの殺し屋」という意味があります。マクロファージや好中球はカラダに入ったウイルスを食べますが、細胞の中に入ると手を出せなくなります。
NK細胞はそのようにウイルスが入り込んだ細胞を見つけ、誰からも命令されることなく、その細胞ごと壊します。NK細胞の殺傷能力はとても高く、特に抗腫瘍効果があります。
NK細胞が欠乏するとガンをはじめとして慢性疾患や遺伝子疾患、感染症、自己免疫疾患などを発症しやすくなります。加齢とともにNK細胞は減少し、免疫力は下がります。
NK細胞を活性化させるには、バランスの取れた食事、十分な睡眠、運動、ストレスを溜めないこと、薬の乱用をしない、などが大切です。
NK細胞は気分によっても数が変化します。悲しむと減り、笑うと活性化します。これは、楽しい時に脳内で分泌されるβエンドルフィンとNK細胞が結合するためです。
<豆知識>免疫力とともに大切な基礎代謝
免疫力の役割には触れてきましたが、基礎代謝という言葉もよく耳にすると思います。代謝が上がると、内臓脂肪をエネルギーとして分解し減らします。
その基礎代謝も体温が1℃下がると12%下がるといわれています。もちろん、代謝が高い人は免疫力も高くなりやすいです。基礎代謝が下がると前述の通り内臓脂肪は減りません。
不摂生により内臓脂肪が増えてしまうと内臓脂肪型肥満、いわゆるメタボリックシンドロームになってしまいます。脂肪細胞の役割は、余ったエネルギーの貯蔵だけではなく、血液中の糖質や脂質、血圧のコントロールなどの大きな影響を与えているといわれています。
しかし、内臓脂肪が必要以上に増えると血液中の血糖値・中性脂肪・コレステロールなどの値を上げ血液がドロドロになり血行が悪くなります。
このように代謝機能も健康維持にとても大切な要素となります。体温管理をしっかり行い、基礎代謝の向上に努めてください。